「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書の公表について

以下のとおり、有識者会議の報告書が公表されましたので、ご参考までにお知らせします。比較推奨販売と個人向けリスクマネジメントに関する部分のみ抜粋記載をしております。ご参考にしていただければ幸いです。

【「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書の公表について】

損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議(座長:洲崎 博史 同志社大学大学院司法研究科教授)においては、保険金不正請求事案及び保険料調整行為事案に関する一連の行政対応等において認識した構造的課題につき、

  1. 損害保険会社や保険代理店に対し、顧客本位の業務運営を徹底させる、
  2. 我が国保険市場に健全な競争環境を実現する

という観点から、主に制度・監督上の論点について、令和6年3月から6月にかけて、幅広く議論を行いました。

「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書(別紙)を公表します。

https://www.fsa.go.jp/news/r5/singi/20240625.html

※以下の別紙・参考のPDF資料は、上記のURLからもダウンロードが可能です。

(別紙)「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書(PDF:2,327KB)

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/houkokusyo.pdf

(参考)「損害保険業の構造的課題と競争のあり方に関する有識者会議」報告書の概要(PDF:777KB)

https://www.fsa.go.jp/singi/sonpo/gaiyou.pdf

【乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保】(抜粋)

4.乗合代理店における適切な比較推奨販売の確保

保険業法においては、顧客ニーズの多様化や複数の商品を比較して保険への加入を検討するといった消費者行動の変化等を踏まえ、顧客が自らのニーズに合った保険に加入することを確保するため、乗合代理店に対して、顧客の意向等に基づき、複数の保険商品に関する情報提供を通じ、比較推奨販売を行うなどといった適切な保険募集を求めている。しかしながら、今般の事案においては、3.(1)のとおり、乗合代理店が損害保険会社からの便宜供与の実績等の理由により、同損害保険会社の商品を推奨することを決定しておきながら、顧客に対して「特定の損害保険会社の事務に精通している」といった本来の理由16を隠した説明を行っていたなど、比較推奨販売に関する規定が不適切に運用されていたことも明らかになった。こうした実態を踏まえ、損害保険会社に対して、自社の保険商品の優先的な取扱いを誘引するための便宜供与を解消する態勢の整備を求めることに加え、乗合代理店に対して、「金融サービスの提供及び利用環境の整備等に関する法律」(平成 12 年法律第 101 号)における顧客等に対する誠実義務の趣旨も踏まえ、適切な比較推奨販売を行うよう求める必要がある。その際には、乗合代理店における保険募集の実務や募集形態等を踏まえた上で、様々なケースに応じた保険募集が適切に行われるよう、例えば、以下の点について検討すべきである。

■保険募集人が、顧客に対して比較推奨を行う場合においては、顧客の意向を踏まえ、顧客の最善の利益を勘案しつつ、顧客にとって最適と考えられるものを比較又は推奨提案し、比較に係る事項や提案の理由(単に「経営方針」等のみにとどまるのではなく、顧客の立場に立ち、その顧客にとって提案商品が最適と考えた具体的な理由)を分かりやすく説明する。

■保険募集人の提案する保険商品が、どのような商品群から選定された上で提案されているのかなどについて、顧客に対して、例えば、取り扱う保険商品の範囲、募集手数料に関する情報、乗り合っている保険会社のリスト等の情報を提供する。また、自動車保険について、顧客がその補償内容を十分に理解することは難しいといった指摘もある。このため、日本損害保険協会においては、顧客の関心も踏まえつつ、顧客の利益につながるような情報や保険商品選択の参考となる情報等をまとめたガイドブックを作成・配布するなど、保険リテラシーの向上に資する取組みを充実させるべきである。

(参考: 商品特性や保険料水準等の客観的な基準や理由等に基づくことなく、特定の商品を顧客に提示・推奨する場合には、同提示・推奨の理由を分かりやすく説明することが求められている(保険業法施行規則第 227 条の2第3項第4号ハ)。)

【2.個人の保険契約者に対するリスクマネジメントのインセンティブ付け 】(抜粋)

個人に保険商品を販売する際に、個々の保険契約者に対して、保険契約者自身のリスクマネジメントの向上に資するインセンティブが働くような保険となっているか、という視点での取組みが必要と考えられる。例えば、自動車保険について、少額事故の場合に保険金請求をしないという判断をする契約者が相応に存在するが、これは、事故による損害額の大きさにかかわらず、3等級下がるという業界ルールがその大きな要因となっていることが考えられる。少額事故であれば免責とする、という選択肢を保険募集時に示すと同時に、前述の業界ルールを変更し、保険料に損害額の多寡という視点を入れることで、保険契約者自身のリスクマネジメントの向上に資するとの指摘もある。

(参考: 個人向けの火災保険等には等級制度すら存在せず、このことも保険契約者のリスクマネジメントの向上が図られない一因であるとの指摘もある。現行の、支払保険金の額にかかわらず、事故歴によってのみ保険料が決まる仕組みを、例えば、支払保険金の額の多寡に応じて等級ダウン率を変える仕組みに改めることなどが考えられる